近年、中国の主要製鋼メーカーにおいては、製鋼設備や品質管理体制が大きく向上しており、
成分管理、内部品質、均質性、加工特性において、日本材と同等レベルのものが安定的に供給が可能になっています。
しかし、中国から輸入される金型用鋼材の中には、品質を十分に考慮せず、コストを最優先として製造された粗悪な
材料が流通している事例もあります。
中国製の鋼材調達で粗悪品を回避する方法について記述します。
①「材質名」だけで判断しない(最重要)
中国では P20/718/2738/NAK80 等の名称が非常に曖昧に使われます。
「P20」でも化学成分、製鋼法(EF・LF・VD・ESR)、鍛造比、均質化処理が全く異なるケースが多くあります。
また、有名日本メーカー名を名乗るだけの材料も存在します。
※対策
・中国規格+メーカー独自規格(Internal Spec)まで必ず確認
・「日本材完全同等」ではなく→ 用途限定での性能適合を基準に判断
② 製鋼メーカーを限定する(商社任せにしない)粗悪品の多くは、小規模製鋼所+流通商社経由で発生します。
※推奨される条件 国有系・大手特殊鋼メーカー
※製造設備の自社保有
LD+LF+RH(最低条件)可能であれば ESR(Electro Slag Remelting:電気炉スラグ再溶解)
金型鋼の量産実績がある
※実務的対策
・メーカー名・工場名を明記した見積書を要求
・「在庫品」「市場調達品」の場合は要注意
③ MTC(ミルシート)を必ず原本で取得 MTCの流用・改ざん(サイズとヒートNOが不一致)
※チェックポイント
・Heat No. と材料への刻印の一致
・化学成分が規格下限ギリギリ
・硬度レンジが広すぎないか
④ 鍛造比・サイズ実績を必ず確認 中国材の品質差は鍛造工程で決まります。
大型ブロックで鍛造比不足 圧下不足による心部組織不良
※実務対策
・ 過去の同等サイズ製作実績を確認
・鍛造比(例:≥3.5、≥4.0など)を数値で指定
・圧延材流用」はNG
⑤ 価格が「安すぎる」場合は必ず理由を確認
安すぎる理由の典型例
・真空脱ガスなし
・低鍛造比
・在庫材の転用
・規格外成分混入
・価格差の根拠説明を要求
・日本材の50%以下は要警戒
⑥ 第三者検査の活用(必要に応じて)
・成分分析
・超音波探傷(UT)
・硬度分布測定
まとめ(実務的結論)
中国で粗悪な金型鋼材を掴まないためには、
「材質名」ではなく
「メーカー × 製鋼プロセス × 鍛造実績 × 用途適合性」で判断することが重要です。
中国材には以下
・ 日本材に近い性能を持つ優良材
・コスト最優先の粗悪材
が明確に混在しています。
正しい選別と用途別採用を行えば、中国材は「リスク」ではなく「戦力」になります