中国宝武鋼鉄グループ(以下、宝武)は、世界最大の鉄鋼メーカーとして、業界のグリーン変革を積極的に牽引しています。
「カーボンピーク(炭素排出量のピークアウト)」および「カーボンニュートラル」の実現に向けた戦略を全面的に推進し、体系的なグリーン・低炭素発展ロードマップを構築しています。
ロードマップ:カーボンピークアウトからカーボンニュートラルへ
宝武は、段階的かつ明確なスケジュールを策定しています。
・カーボンピークアウト(2023年)
国家目標(2030年)より7年早い2023年にピークアウトを達成。
・2025年(基盤構築フェーズ)
2020年比8%削減を目標とし、最大30%削減を可能とする低炭素技術の確立を推進。
・2035年(技術拡大フェーズ)
低炭素技術の本格展開により、CO₂排出量30%削減を目指す。
・2050年(カーボンニュートラル達成)
国家目標(2060年)より10年早い2050年の達成を目指す。
6つの主要技術経路
2021年11月に発表された中国鉄鋼業界初の低炭素冶金ロードマップにおいて、以下の6つの技術領域を
重点施策として掲げています。
1.極限エネルギー効率の追求 エネルギー消費の最小化
2.水素還元循環式高炉(HyCROF) コークスの一部を水素で代替
3.水素ベースシャフト炉 水素による直接還元製鉄(コークスレス)
4.ニアネットシェイプ製造 工程短縮による省エネルギー化
5.冶金資源の循環利用 鉄スクラップ等のリサイクル率向上
6.炭素回収・利用(CCU) CO₂の回収・再資源化
核心的な取り組みと実践
・HyCROF技術の実用化
水素還元循環式高炉(HyCROF)は、従来の製鉄プロセス(高炉法)で使われる石炭(コークス)の一部を水素に置き換え、さらに排出されるガスを循環させて再利用することでCO2排出量を大幅に削減する次世代の技術です
宝武が独自開発したHyCROF(富水素炭素循環酸素高炉)は、2,500m³級の商業実証炉が安定稼働しており、従来高炉と比較して固体燃料使用量およびCO₂排出量の大幅削減を実現しています。
・湛江ニアゼロカーボン製鉄ライン
広東省湛江に建設された本プロジェクトは、総投資額約45億元(約900億円)、年産100万トン規模の
中国初のニアゼロカーボン製鉄拠点です。
「水素ベースシャフト炉による直接還元鉄+鉄スクラップ」を原料とした電気炉短工程を採用し、従来の高炉・転炉法(長工程)と比較して大幅なCO₂削減効果を発揮します。
また、全酸素高炉やガス循環利用技術の導入により、エネルギー利用効率のさらなる向上も図っています。
サプライチェーンおよびエネルギー戦略
宝武は自社の排出削減にとどまらず、グリーン・低炭素型サプライチェーンの構築を推進しています。
具体的には、グリーン原料(ペレット、直接還元鉄等)の供給体制整備、資源調達段階における低炭素化および持続可能性の強化、さらに上流から下流までを包含したグリーン鉄鋼バリューチェーンの構築に取り組んでいます。
エネルギー面では、水素エネルギー、太陽光、風力などのクリーンエネルギーおよび再生可能エネルギーの導入を推進するとともに、排熱回収やエネルギー効率の改善により、排出源そのものの低減を図っています。
総括
中国宝武は、「技術革新」「産業チェーンの協働」「エネルギー構造の最適化」を軸とした包括的
アプローチにより、グリーン鉄鋼への転換を加速しています。
これらの取り組みは、自社のみならず、自動車産業をはじめとする下流製造業のCO₂削減にも大きく貢献するものと期待されます。